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いつかまたここで 6

Posted by 華蓮 on 09.2014 0 comments
★タクミくんシリーズ「station」華蓮的補完計画目次★

***********************



「あのCD-ROM、サンキュ」

ひとしきり抱きしめあった後、なんだか無性に照れくさくて
二人して夜景が見えるレストランの窓際に移動した。
支配人もぼくたちが知り合いだと知って、一気に肩の力が抜けたのか
再会を祝してとかなんとかでシャンパンをご馳走してくれた。
まったく人がいいっていうかなんていうか…。

「ふふふ。みんな変わってなかっただろう?ちなみにあれ作ってくれたの矢倉くんと政貴だから。ちゃんとお礼言っておいた方がいいよ」
「ああ。今度ちゃんと改めてお礼の連絡をするよ。約束する」
「うん」

なんとなく、沈黙になってもぜんぜん苦痛じゃなくて、
ギイがそばにいることが本当に幸せで、ぼくは思わずシャンパンを見ながら微笑んだ。

「どうした?」
「ん?まさかこんなに早くギイに会えるとは思ってなかったんだよね。だから、この作戦を考えた赤池くんは本当にすごいなーって思ってた」
「はぁ?作戦ってなんだよ、作戦って」
「ん~っとどこから話せばいいのかな?っていうか、ギイはどこまで知ってるの?」
「………CMのことか?」
「あ!そうだ!CMって言えば、あの曲の著作権譲渡の契約書返送なかったけど、どうなったの?」
「………サイン……できるわけないじゃんか。CD-ROMの最後のおまえのメッセージ。言葉は何もなかったけど、あの曲を弾いてるお前の映像で、見てた場所会社の自分のデスクだったのに、もう涙止まらなくて。愛しくて、切なくて、でも、温かくて、託生に会いたくて……一生分かと思うくらい泣いた」
「………ギイ」
「何も残せず、連絡もできない状況に追い込まれて、焦ってもがいてた時でも、託生はオレと一緒に戦ってくれてたんだって、恨まれても仕方ないような状況だったのに、オレのこと待ってくれてるんだって思ったら、もうダメだった。涙腺崩壊。自我崩壊」
「ふふふ、なんだそれ、大げさだなぁ」
「大げさじゃないよ。本当にあのCD-ROM見るまで、オレはちょっと本当は諦めかけていたのかもしれない。だから、あれを観て、オレも目が覚めた。オレはオレのグラウンドで戦うよ。おまえと一緒にいれる場所を手に入れるために」
「うん。ぼくはね、ギイのために弾くよ。ギイを支えれる音を作っていく。ぼくにはそれしかできないから」

チンッとグラスを合わせて笑いあう。

「なぁ、託生」
「ん?」

ぼんやり夜景を見ながら、ギイの言葉に耳を傾ける。

「このバイオリン……」

ぼくの足元にあるバイオリンケース。
ギイはさりげなく視線を落とす。

「……ぼくのバイオリンはね、世界に1つだけでいいんだ。今はちょっと手元にないんだけど、それまでは借り物なんだけど、この子がぼくの相棒なんだよ」
「借り物?」
「そう。須田先生にお願いして、借りてるんだ」
「………託生……」
「ただ、ぼくの技術はまだまだだから、使いこなしてあげれてなかったし、ほかにもっとあの子が輝ける場所があるとしたら、ぼくはそれはそれでいいと思ってるよ」

ぼくが笑うとギイはテーブルの上にあるぼくの手に自分の手を重ねてぎゅっと握り締めた。
そして、おもむろに胸元から携帯を出すと、どこかへ連絡をかけた。


「オレ。持ってきて」


それだけ言って電話を切ったけど、その携帯についてるストラップにぼくは目を奪われた。
だって……そのストラップは……。
ぼくの視線に気づいたのか、ギイはちょっと照れくさそうに笑って、

「……外せるわけないよ」

そう言った。
どうしよう、ギイ。ぼくも泣きそうだよ。
ぼくは自分のかばんの中から、あれから一度も画面が起動することなかったけれど、そ

れでもお守りのように持ち歩いていた携帯を机の上に出した。
そして、そこにはあのストラップ。

「………まだ……もっててくれたのか……」
「捨てれるわけないじゃないか」

愛しそうに携帯をなでるギイの手。
まるでぼくを撫でているかのような手に幸せが募る。
どうしよう、なんか幸せすぎてバチが当たるかもしれない。
そんなことすら思えてくるぼくも大概重症だと思う。


そこへ、


「義一さん、お持ちしました」

ぼくたちの後ろから控えめに声をかけてくれたのは、

「ああ、ありがとう」
「島岡さん……」

そう、ぼくが2回も突っ返してしまった島岡さんがそこにいた。

「先日付けで副社長付き第一秘書になりました島岡です。どうぞ今後ともよろしくお願い致します」

そう言って笑った島岡さんにぼくも笑った。
そうか、よかった。よかったね、ギイ。
ぼくは笑顔のままギイを見やる。

「なぁ、託生。申し訳ないんだけど、そのバイオリン。須田先生に丁重にお返ししてくれないか?やっぱりおまえにはコレで演奏してほしいだ、オレ」

そう言って、ギイはあの高性能な機能がついたバイオリンケースをテーブルに置いた。

「………ギイ……」
「これで、あの曲が聴きたい。できれば今、ここで」
「義一さん。一応支配人には1曲程度なら余興ってことで弾いてもらってもかまわないと許可は頂いています」
「………島岡さん」
「しばらく使ってやってないんだ。おまえしか受け付けない子だったから手入れもしきれてない。けれど、このバイオリンで弾くおまえが見たい」
「ギイ……」
「私も是非、あの曲を生演奏で聴いてみたいです。託生さん」

二人からの頼みを断れる人っているのかな。
ぼくは苦笑いを浮かべながら、久しぶりのケースに手を伸ばした。
ぼくの指紋認証で開くケース。
中に眠るのはストラディバリウス。

古い木の香。
弓を締めて、軽く調弦をする。
うん、大丈夫そうだ。
軽く慣らすように短い曲を弾いてみたけれど、特に問題もない。
これなら、思う存分あの曲が弾ける。
やっと、ギイに届くんだ。ぼくの音が。
ぼくはバイオリンを片手にゆっくりと舞台に向った。

レストランにはお客様ももうまばらで、
バックヤードでは片付けも始まっていることだろう。
ギイと島岡さんはバイオリンが一番よく聴こえるだろう場所を支配人に聞いて、そこに腰を落ち着けた。
支配人も島岡さんから聞いたのか、ぼく待ちをしている風でバーカウンターに腰を据えていた。

舞台からギイを観ると、ギイは真摯にぼくだけを見つめていて、
ぼくはその視線を受け止めて、ゆっくりとまぶたを閉じた。
ギイのための曲。
ギイのために弾くよ。このバイオリンで。



最後の一音がキレイに響きながら、空気に溶けて…そして消えていく。



それと同時に世界に時間が戻ってくる。
ゆっくりバイオリンを下ろして、目を開けるとレストランは静寂に包まれていた。
食事をしていただろうカップルも、接待中?みたいなサラリーマンも、給仕のアルバイトくんたちもいつもオレンジジュースを作ってくれるバーテンさんもみんな固まっていた。

あれ?どうしたの??
なんかすっごい観られてるけど……。
なんか間違えた?

さすがに誰も動き出さないからどうしていいかわからなくなった頃、
スッと立ち上がったギイがそのままぼくへ向って歩いてきて、
おもむろにぎゅっとぼくを抱きしめた。


「…………ありがとう」


そう震えるギイの声が耳元で聴こえた瞬間、
島岡さんが立ち上がって大きな拍手をくれて、
それにつられるようにして、レストランに残っていたお客様が全員立ち上がってぼくに惜しみない拍手をくれる。
給仕のアルバイトくんもバーテンさんも裏方のコックさん達も支配人も顔を真っ赤にしてたくさんの拍手をくれた。
なんだかすっごいそれが嬉しくて、ぼくはギイに抱きついた。




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