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いつかまたここで 2

Posted by 華蓮 on 09.2014 0 comments
★タクミくんシリーズ「station」華蓮的補完計画目次★

***********************



大学生活も2年目を向え、2年前期、クラス単位の発表会は上位入賞を果たし、後期はさらに技術向上を図り、ソロ作品や二重奏ソナタのレパートリーを中心に学び、大学独自の奨学制度を利用したコンクールにも入賞し、両親へかける学費の負担軽減も同時にクリアすることができた。

その後、進められるまま受けたコンクールにも上位入賞することができ、オケの客演や先輩や卒業生から、純粋クラシックとは関係のないポップスや生演奏が売りの某高級Nホテルレストランでの演奏の仕事も進んで引き受けたりもした。

(実はこのレストランの生演奏。演目は好きにさせてもらえるので、ぼく的にはすっごく嬉しい。しかも、思いついた時に作曲した曲も支配人が気に入ってくれて演目利用の許可ももらえているし、二重で嬉しい仕事だったりする)

今年はたまたまイブに生演奏の仕事が入り、僕の作った曲で支配人からいくつかリクエストされたものを踏まえて演目を組んだ。


イブの日、最後の曲。
この曲はギイを思って作った曲。

目を閉じた闇の中に見えた、たった一つのひかり。

ひかりの先に見えるのは、ギイの笑顔。

胸に残ったたくさんの愛しい思い出を明日への希望にして。

ぼくの小さな手で生まれたこの音楽が、誰かを導くひかりになればいい。

ぼくの中のギイの思い。

ギイの笑っている顔が好きだから、笑っているギイへ気持ちを込めて弾いた。

いつかこの音がギイに届きますように。

聖なる夜に愛する人へ想いが届きますように。




この日、ぼくの演奏日とは知らず、たまたま食事にきていた赤池くんと奈美ちゃんがぼくの演奏した曲を大絶賛してくれて、CD買いたいから曲名を教えてほしいなんて言われて二度びっくりした(ぼくのオリジナルだと伝えた時の赤池くんの顔もかなりびっくりしてて、お互い最後は吹き出したんだけど)。

だけど純粋にあの曲を気に入ってくれた二人に感謝の気持ちを込めて、世界に2枚しかないぼくのオリジナル曲を入れたCDを遅ればせながらクリスマスプレゼントとして贈った。

それにしても、イブにあのレストランで食事って…どうやらあの二人の恋はちょっと進展したっぽい?


ギイに音を届けるまで、ぼくはぼくの戦いをやめるつもりはないけれど、
それでも、時間は無常にも過ぎていくわけで、
今年度の交換留学の枠を狙って、ぼくは自分のモチベーションを切り替えていた。
一つ一つ階段を上り、あともう一歩で海を渡って、ギイのそばに行く。
NYに行けたとしても、会える補償はないけれど、
もしかしたら、ギイがぼくの音を見つけてくれる可能性がほんの少しで上がるなら
ぼくはそれに賭けてみようと思った。




そして、そんな僕に、僕の運命を大きく変える1本の電話が鳴る。





「……え?」

にわかに信じられない言葉に思わず聞き返したけど、絶対ぼくは悪くない。
だって………。

「葉山くんが驚くのも無理もないんだけど、事実なんだよ。君が作曲した曲をCMで起用したいと問い合わせがあったんだ。正確には、君が演奏している曲がなんていう曲なのかの問い合わせだったんだが、あの曲は君の曲で曲名なんてなかったから答えようがなくてね。演奏者のオリジナルの曲だと説明したら、演奏者を紹介してもらいたいと言われてね。
どうだろう?一度会ってみるかい?」


……ぼくの曲を気に入ってくれた人がいる。CMって??え??


「おーい。葉山くん、聞いてるかい?」
「あ!は、はい!!聞いてます!あ、あの!!ぼくどうしたらいいですか??」
「あはは!それを僕に聞かれてもね。とりあえず、今度の演奏日、演奏が終わってから席を設けてあげるから話だけでも聞いてみたらどうかな?僕も君の曲、すごくいいと思うから、CMソングになるなら大賛成だ。あ、そうそう。ちなみにそのCMを作ってる会社もすごく有名なところだから騙されるとかそういうのはないから安心してくれていいよ」
「………わ、わかりました」
「うん、じゃ、よろしくね」


信じられない……。まさかのまさかのまさかだよね?
ぼく、狐に騙されたりとか、そんなんじゃないよね??
しばらく携帯を握ったまま呆然とした。
そして、あれよあれよという間にホテルでの演奏日を迎える。
いつも通りの演奏を終え、控え室に下がり慣れた手つきでバイオリンをしまう。
そのタイミングを見計らったように控え室の扉にノックがされて、
支配人が一人の男性を室内に招き入れた。




「……………島岡さん」




そう、そこには数年前と変わらない姿で、
きっちりとスーツを着こなした島岡さんがいた。

「お久しぶりです。託生さん」
「おや、お二人はお知り合いだったんですか?」

支配人がぼくと島岡さんの顔を交互に見て、目をぱちくりさせた。
それはそうだろう。
誰もが知ってるFグループの人間と、イチ音大生に面識があると思う方が無理だ。

「すいません。さっそくで申し訳ないのですが、今からCMのご説明をさせて頂いても?」

支配人の問いに答えることなく、島岡さんはにっこりと笑みを浮かべて
支配人にそれとなく退出を促す。
もちろん、支配人もその空気が読めない人じゃない。
基本、ホテルはプライベートを詮索しないものだから。
優雅に一礼して、そのまま部屋から退出していった。
後に残されたのは、ぼくと島岡さんだけ。

「お元気そうですね」
「………はぁ」

とにかく驚きが先行して、どうしていいかわからない。
なんで……島岡さん?

「なんで私がここにいるのか、不思議でいっぱいって顔をされていますね」
「え!?」

エスパーーーー??

「……ふふふ。相変わらずのようで何よりです」
「………えっと、島岡さんもお変わりないようで何よりです」

くすっと本当に楽しそうに笑って島岡さんは目線で、

「よろしければお掛けになってください。お話はそれからで」
「あ、はい。あ!コーヒーか何か飲まれますか?準備しますけど」
「では、コーヒーをお願いできますか?」

島岡さんからのオーダーを確認して、内線を押そうと思ったら軽いノックとともに、
レストランのアルバイトの男の子がトレーに乗せたコーヒーを二つ手渡してきた。


………さすが、支配人。気配りの人。


ぼくはアルバイトの男の子にお礼を言って、そのトレーをそのまま、机の上に置いて、
カップの1つを島岡さんの前に置いた。

「託生さん」
「はい」

コーヒーを一口飲んで、ゆっくりと島岡さんがぼくに視線を向ける。

「私に何か聞きたいことはありますか?」
「え?」

突然、そんなことを言われるなんて思ってもみなかった。
聞けるものなら聞いてみたい。
ギイは元気でやっているのかと。
ちゃんと笑えているのかと。
だけど、目の前にいる島岡さんを以前と同じように無条件に信じていいのか、
ぼくにはわからない。
あの時、誰に何も言う時間すら与えられずに祠堂を去ったギイ。
あれからもう2年。
ギイからの連絡はない。
まだギイは自分の思うように動けないのかもしれない。
だから、ぼくは大きく息を吸って、吐いて、ゆっくりと島岡さんの目を見つめ返した。




「……ぼくのオリジナルの曲をCMに使いたいというのは本当ですか?」




そう聞いた。
さすがの島岡さんも最初からこの問いがくるとは想定していなかったのか、
一瞬びっくりした顔をしたけれど、すぐにいつもの表情に戻る。

「え、ええ」
「どの曲をCMに使いたいんですか?ぼくが作った曲は1曲だけではないので、どの曲を使いたいと言われているのかわからないんですけど」
「…………」

困惑。
島岡さんの表情を言葉にするとまさにソレだった。

「音源として公式に残したことのない曲たちです。まだタイトルもありません。何月何日のレストランで聴かれた曲なのかがわかれば、ある程度わかるとは思います。島岡さんはそこまでの詳細をご存知ですか?」
「……確か……12月24日のクリスマスイブだと聞いています」
「クリスマスイブですか……それならわかると思います」

ぼくは立ち上がってかばんの中から1枚のCDを差し出した。

「これはぼくが今まで作った曲ばかりです。1曲まるまるは入れていません。あくまでサンプル的感覚で聴いていただけたらいいと思います。12月24日に演奏したのは3曲目、7曲目、12曲目です。聴いて頂けて本当に使いたいと思って頂けるのであれば、詳しいお話を聞かせてもらいたいと思います」

こんなにすらすら交渉っぽいことができるとは自分でも思わなかった。
実は今回の話が来た時に赤池くんに相談をしたら、
どんなに大手でも、無名の音大生の作った曲をどう使うかわからないから即決するなと口をすーーーーーっぱくして言われていたから。
それにサンプルをくれと1曲まるまる差し出したら、そのまま全く違う人がその曲を世間に出してしまうかもしれないと懇々と説明された。
なので、まずは30秒程度のサンプル音源をCDに焼いて、それで相手の出方を確認して、それでも使いたいと言ってきたら、赤池くん同席の元、書面を交わしてくれることになっている。
……どうやら赤池くんはぼくが騙されること前提のようで、何度大丈夫だと言っても、がんとして譲らなかったので、ぼくが折れた。
まさかの1回目交渉テーブルが島岡さんだとは赤池くんも思うまい。

「わかりました。こちらのCDは確かにお預かりします。当社で検討後、また改めてご連絡をさせて頂きます」
「はい、よろしくお願いします」

ぼくは椅子に座ったままぺこりっと頭を下げた。

「………託生さん」
「なんでしょう?」
「何も聞かれないんですか?」
「そうですね…。一つ疑問に思っていることはありますよ」
「それはなんでしょうか」

幾分姿勢を正した島岡さんにぼくは少し笑った。

「どうして社長秘書である島岡さんが、イチ音大生のオリジナル曲を検討する為にわざわざ直接来たんですか?」
「……託生さん……」
「聞いておいてなんですけど、答えは必要ないです。すいません。軽くただの八つ当たりですから」

もう話は終わったとばかりにぼくは椅子から立ち上がり、コートを羽織った。
もちろん、そのコートはギイからもらったものだけれど。
そして、バイオリンケースを手に取り、あ、そうだと一言付け加えた。

「そのCDは返却不要です。このCMの話が本決まりになったとしても、ならなかったとしても島岡さんの判断で処理してください」

そう言い残してぼくは控え室を後にした。


ねぇ、ギイ。
島岡さんはギイの味方でいてくれるの?
今回の話、ギイが手回しした話だったのかな?
そうだったとしても、ギイの不利になるかもしれない可能性が0じゃない限り、
ぼくはギイの枷には絶対なりたくないんだよ。

真っ黒な空からちらちら舞う雪が街灯の光でキラキラと輝く。
その輝きに目を細めながら、ギイも同じ空を眺めているのかも…そうなんとなく思った。





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